【令和6年4月から開始】相続登記の義務化について優しく解説
多くの方が自分には関係ないことかも、と思われがちな「相続登記」 今年、令和6年にこの相続登記の手続きが義務化されます。
ご家族や身内の方が亡くなったとき、所有している土地を手放したいと思ったときなどこの相続登記をしないまま放置しておくと罰則や、対応が困難化して大変になる可能性もあります。
この記事では、これから始まる相続登記の義務化について、わかりやすく解説します、
また対応しなければいけないとわかったときは、ぜひエイト司法書士事務所にご相談ください。
相続登記の義務化でやるべきこと
まずは「相続登記」について、概要を知っていきましょう。
「相続登記」とは、相続した土地や建物について「不動産登記簿」の名義を変更することです。
この手続きは「法務局」で行います。
★不動産登記簿とは
不動産の物理的状況や権利関係を法的に記録(登録)した帳簿のこと。
土地登記簿と建物登記簿の2種類があります。土地や建物の面積や所有者の情報などが記録されています。
ご両親や親族が所有していた土地や建物を相続で受け取ることになったとき、相続登記の手続きを行って、新しい所有者の情報を更新しなくてはいけないということですね。
一方で不動産の相続を放棄する場合は、相続登記以外にも対応すべきことがありますので、自分一人で悩まずに専門家に早く相談することが、トラブルを事前に防ぐ重要なポイントといえます。
相続登記の義務化の概要
★遺産分割協議とは
土地や建物の不動産を誰が相続するのか、相続人全員で話し合って決めることです。不動産だけに限らず、財産全般にも必要な対応になります。
なぜ義務化されたのか:所有者不明の土地が日本全国で22%もある
別に義務化までしなくても、と考える方も多いかもしれませんが、令和4年の調査では所有者がわからない土地は日本国土の22%もあり、その面積にして九州よりも広い土地がそのまま放置されています。
令和4年度(2022年度)に地方公共団体が実施した地籍調査事業では、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しなかった土地の割合は、24%(令和4年度国土交通省調べ)にも及んでいます。
参照政府広報オンライン:なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!
所有者がわからず、行政が介入できない・放置が続くことで様々なトラブルや事故を誘発させる危険があります。
- 整備が必要な土地が放置されていることで近隣住民や景観に悪影響を与える
- 災害や事故が起きたとき土砂崩れや建物の崩壊などリスクが高まり危険が伴う
- 気がついた親族が手続きに動いても対応が困難化し大きな負担になる
また相続登記への負担を減らすための法整備はすでに始まっています。かかる税金の負担を軽くする制度や、管理できない土地を手放したい場合にも一定の要件のもとで、国に返還できる制度も始まっています。(知ってほしい2つの制度でご紹介します)
相続登記義務化の開始時期は令和6年の4月1日から
今回の義務化は、原則令和6年の4月1日から始まりますが、一部段階的に施行される時期が異なります。
②の新制度の取り組みはすでに始まっており、①の義務化を進めるために必要な制度の準備といえます。
①相続による所有権移転登記の義務化(新たな不明土地の発生を防止)
②所有者不明土地を利用できるような制度の創設(既に不明土地になっている状態を解消)
どのような人が対象となるか
義務化の開始は4月1日とされていますが、大きな注意点としては、施行以前でも不動産を所有しており登記の手続きを行っていない方もすべて対象となります。
- ・相続手続きで、親族や家族から不動産を財産として受け取る相続人となった人
- ・令和6年の4月1日以前に不動産を所有し、手続きを行っていない人
- ・自己の相続開始を知り、不動産を所有したと知って3年以内に対応していない人
特に遡って対応する方は、相続から時間が経過しているため手続きが大変になる・複数人から権利の所在や対応を確認する必要がある可能性もあります。
行政への手続きのため腰が重くなりがちですが、可能な限り早く対応することが最もさまざまなリスクを減らすことにつながります。
相続登記を怠った場合の罰則やリスク
正当な理由がないのにずっと相続登記の対応を放置していると、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となってしまいます。
しかし、相続登記の対応を早く始めなくてはと思いつつも、すぐに対応できない場合もあるかと思います。
※対応が遅れやすいトラブルケース
- ・長年、相続登記の対応が放置されていて情報を遡るのが困難
- ・相続に関わる人数が多く、全員の同意がすぐに得られない、連絡がつかない
- ・家族や親族との関係が不仲で話し合いなどができる状態ではない場合 など…
その場合はわからないからと放置をせずに、すぐに司法書士や専門家にまず相談してみましょう。特に連絡が取れない。行方がわからない親族がいる場合は、家庭裁判所への相談が必要です。
一人で悩まず、専門家や行政の協力を検討しましょう。
リスク1.売却ができなくなる・手放しにくくなる
きちんと相続登記が行われていない土地や建物は、売却の手続きを行うことができません。
売買を担当する不動産会社も、所有者があいまいな物件や土地を売るのはとてもリスクが高く避けたいお客さまだからです。
また土地や建物などの不動産を、複数人で共有財産として相続した場合、相続登記はもちろんのこと売却の際にも全員の同意を得る必要があります。
すぐに手放したい事情があっても、相続登記を行わなかったことで売却手続きがスムーズに行えず、売却の機会を逃してしまうリスクがあります。
リスク2.差し押さえられるリスクがある
土地や建物を相続登記しないままでいると、相続人が借金を負った場合などに債権者から差し押さえられるリスクがあります。
法的な手続きを行っていないと、事実上固定資産税を払いしっかり管理をしていたとしても、権利を主張するのが難しくなります。
相続人が複数人いる場合など、関わる人が多ければ多いほどこのリスクは高まります。
リスク3.時間がかかるほど相続人が増え手続きが大変になる
今回の法整備では、相続から3年以内という期日が定められましたが、今までは義務ではなく厳格な期限を指定をしていませんでした。
しかし相続手続きから時間が経過するということは、相続人が亡くなってしまう、重病にかかり手続きができる状態ではない、家族がふえるなどの生活状況が変わっていきます。
世代が変わってしまうと、さらに相続人たちから同意を得る、円滑な手続きが難しくなっていきます。
自分の子どもや孫たちが大変な苦労をすることは容易に予想できます。可能な限り、その時の所有者がしっかり手続きを継続していくことがとても大切です。
相続登記をする相続人を助ける2つの制度
相続登記がとても大切だとわかっていても、忙しい日々を過ごす中で時間がとれない、費用面ですぐに対応ができないなどのさまざまな事情があるはずです。
相続人の負担を少しでも減らし、相続登記に取り組んでもらうために2つの知っておきたい制度をご紹介します。
「相続人申告登記」制度
相続登記を行う前には、相続の権利がある人たちから同意や話し合いを行って同意を得る必要があります。
さらに収集する資料も多くあり、手続きを行う相続人の負担は大きいものです。そこで、「申請義務を簡易に履行できる」ようにするため、新しい登記を設けられました。
所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなす
https://houmukyoku.moj.go.jp/sendai/content/001383449.pdf
完全な相続登記が完了した訳ではありませんが、現時点で相続人の一人が申請を行うことで、所有者がいない状態を防げます。また相続人同士で協議中でも申請が可能です。
「相続土地国庫帰属制度」
相続や遺贈によって土地を持った人が、土地を国に返還することができる制度です。
土地を相続または遺贈によって取得した相続人が申請することができる申請することができ、法務局から土地の調査や要件審査を受けます。一定の要件に該当する土地である場合は、土地を手放し国の財産とすることを承認してもらいます。
注意点としては、無料で引き取ってくれるわけではなく、一定の負担金を納付する必要があります。土地の状態によっては、対象外となる可能性もありますが、ご自身の負担を減らすという観点ではまず相談してもよいかもしれません。
相続登記の手続きの大まかな4ステップ
相続登記は大きなステップで見ると以下のような流れで手続きが進みます。
ご自身で手続きをするのも可能ではありますが、ご家庭や状況によって、部分的に時間がかかったり専門家に任せた方がスムーズに完了することもあります。
- 土地や建物の所有者・相続状況を確認する
- 遺産相続・遺言書がある場合、引き継ぐ人を確認する
- 申請に必要な書類を準備する
- 法務局に申請を行う
こうした登記に関する手続きは「司法書士」に任せるのがオススメです。
弁護士、行政書士など、士業の方々はさまざまな手続きに広く対応しているのも事実ですが、実際はできることとできないことの範囲が法律上で決められています。
今回のような不動産の登記に関する手続きは、一般的に司法書士の方々が対応できる範囲が広く安心です。
司法書士に相談がオススメ:不動産や相続手続きを任せられる専門家
これから相続登記を含めた、遺言書の準備や生前対策に取り組むという方は「司法書士」にワンストップで事前に相談を行うのがオススメです。
司法書士は、今回の土地や建物の登記に必要な書類の準備や手続きなどに詳しい専門家です。
また遺言書作成のサポートや、遺言者の方がご自身でさまざまな手続きを行うことが困難な状態の場合、代理人として手続きを代行することもできます。
★司法書士に任せるメリット
- ○不動産・登記に詳しくさまざまな手続きができる
- ○遺言書など生前対策もトータルで任せられる
- ○遺言書作成のサポートや公正証書遺言作成の証人になれる
- ○成年後見人制度などで遺言者をサポートする立場になれる
- ○難しい手続き、必要書類などが複雑なため専門家に任せるほうが安心
相続登記から生前対策まで任せられるエイト司法書士事務所にご相談ください!
今回は、まもなく施行される「相続登記の義務化」について解説しました。
今まで大きな罰則がなかったところため、これから取り組む方も増えてくるかと思います。制度が始まる以前に相続した場合も対象となるので、もし所有している土地や建物がある、親族が最近土地を購入したなど、思い当たる事柄がある場合はまず確認してみましょう。
新しく始まった制度なので、制度自体について詳しく知りたいというご相談も歓迎しています。
ぜひ、お気軽にお声かけください。
記事監修:司法書士 中川哲男