遺言書を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を丁寧に解説
将来に備えて遺言書を残したいと考えたとき、遺言書を預けるという選択肢がでてくると思います。
とはいえ、公証役場で遺言書を作って残してもらうのは大変、でも自筆の遺言書だと正しくかけているか、保管面でも不安になることも多いはず。
難しくてお金もかかると思うと、なかなか遺言書の作成にはいれない。そんな方々を手助けする便利な制度があります。
この記事では自筆証書遺言書を法務局に預けて保管してもらえる、「自筆証書遺言書保管制度」について概要をご紹介します。
「自筆証書遺言書保管制度」で法務局に遺言書を預けると安心な3つの理由
「自筆証書遺言書保管制度」とは、法務局が実施している自筆の遺言書を保管・管理してくれる制度です。
自分で書いた自筆証書遺言書を、法務局に預けることで紛失や改ざんのリスクを減らし、また正しいフォーマットで書けているかのチェックも行ってくれます。
公正証書遺言書に比べて、手軽に費用をおさえつつ遺言書の作成ができるメリットが有り、自筆証書遺言書のデメリットである、不正確・紛失や改ざん、遺言者が書いたものだと担保されにくいなどのデメリットを解消できる便利な制度です。
自筆証遺言書は、若い世代の方や遺言書を費用をおさえてつくりたい、近い将来書き換える必要がある方などにオススメです。
参考:政府インターネットサイトの解説動画
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg23314.html
原本と画像データの2種に分けて保管を行います。
また遺言者さまが亡くなったあとの相続人の方々への連絡や、相続手続きに必要な書類の発行も、保管の申請をした法務局が行ってくれます。
令和2年(2020年)から始まったが、まだまだ知名度が高いとは言えない
この制度は令和2年7月から始まりましたが、まだ十分な知名度があるとはいえません。
以下は制度が始まった令和2年〜令和5年10月までの利用状況がわかるデータです。
保管の申請数 | |
令和2年(7〜12月) | 12,631 |
令和3年 | 17,002 |
令和4年 | 16,802 |
令和5年(10月まで) | 15,799 |
累計 | 62234 (保管数:62066) |
引用元:法務省 制度の利用状況
便利な制度でありながら、遺言書はまだ早い・難しいという思い込みはまだまだ根強いと思います。
しかし、公正証書遺言書よりも自分たちの都合に合わせながら、将来に備えることができるので、ぜひ興味を持っていただければと思います。
メリット1:紛失や改ざんの恐れがなくなり、保管面でも安心
自筆の遺言書を預けておくメリットは、紛失や改ざんを防げるほか、遺言者の方が亡くなったあとに遺言書を相続人が見つけられないといったトラブルを防ぐことができます。
みなさんも自分のご両親や身近な人の、財産がわかるものや貴重品の保管場所を把握していますか?
遺言書は頻繁に見るものではありませんから、どこかに仕舞ってそのまま発見されないまま、全ての相続手続きが終わったあとに見つかった……。なんてことも珍しくありません。
こうした遺言者さまの準備を無駄にしないためにも、自筆の遺言書を行政のもとに預けるのは安心できる選択肢です。
遺言書が後から見つかってトラブルになるケースもあります。遺言書に限らずエンディングノートも、うっかり失くしやすいです。保管の申請をしてから遺言書の内容を変更することもできますから、備えて安心です。
メリット2:検認の手続きが不要、相続人の手続きも楽になる
●正しいフォーマットで書かれているか確認してもらえる
遺言書には決められた書き方があり、その形式が守られていないものは法的な効力を持ちません。
自分で遺言書を作ったとき最も注意したいことは、その遺言書が正しいフォーマットに沿った書き方になっているかどうかです。
「自筆証書遺言書保管制度」では、保管する遺言書のチェックをしてもらえます。そのため、信頼性のある遺言書として扱ってもらえます。
●検認手続が不要、相続人への手続き書類の請求や連絡も楽になる
本制度を利用すると、本来は家庭裁判所の検認が必要な手続きを遺言書を保管する法務局が担当してくれます。
遺言書の内容を執行するには、本来は「検認」の手続きが必要です。
検認は家庭裁判所で行う必要があり、裁判所の立会のもとで相続人が集って内容を確認したり、遺言書の存在を相続人の皆さんに知らせてくれます。
メリット3:公正証書遺言書より作成費用が安く済みやすい
自筆証書遺言書のメリットは、紙とペン、そして印鑑があればまず取り組めるところ。
専門家に内容を相談せずに自力で書けば、ほとんど費用はかかりません。
仮に弁護士・司法書士を始めとした専門家に内容の相談をしたとしても、公正証書遺言書を公証役場で作成するよりかかる費用をおさえられる場合があります。
遺言書の作成にかかる費用についてはこちらの記事でもまとめています。
ぜひどのような部分に費用がかかるのか、確認してみてください。
関連記事:
司法書士が解説!遺言書作成にかかる費用
公証役場では遺言書に記載する内容・財産の金額によって手数料が変わります。そのため、作成を開始した時点でどれくらいの費用がかかるかを見積もるのは難しいです。
こうした費用の見積もりも、専門家に相談するのがオススメです。
費用
自筆証書遺言書保管制度では、遺言書1通の保管にかかる費用は決まっています。
遺言書の内容を変更する際や、遺言書の内容を閲覧する際にも費用がかかりますがこれらも一定の金額です。
また保管年数などによる追加費用の支払いなどはありません。
【制度の利用にかかる主な手数料】
・遺言書1通につき:3,900円
・原本の閲覧の手数料:1回1,700円
・モニターによる閲覧の手数料:1回1,400円
・遺言書の保管を取り消す:手数料0円
参照:制度の手数料について
遺言書の内容について相談はできないため、専門家に相談!
とても便利な制度ですが、自筆でも公証役場で作成するとしても、遺言書そのものの記載内容や財産・相続についての相談は受け付けていません。
個人の財産やプライバシーにも深く関わることのため、信頼できる専門家への相談がおすすめです。
遺言書に記載する内容や、どのような遺言を残せば相続人の方たちが困らずご自身が望む形を叶えられるか、まずは専門家を頼ってみましょう。
遺言書が後から見つかってトラブルになるケースもあります。遺言書に限らずエンディングノートも、うっかり失くしやすいです。保管の申請をしてから遺言書の内容を変更することもできますから、備えて安心です。
遺言書の作成をどの専門家に頼むかも悩ましいことですよね。
こちらに遺言書作成のサービスを展開する専門家たちの得意分野や強み、おすすめのポイントをまとめています。ぜひ参考にしてください。
お住まいの市によって、相談窓口の場所は変わります。
ぜひ足を運びやすいところから、ご相談を持ち込んでみてくださいね。
最初のご相談は無料です
制度を利用して遺言書を預けるための準備ステップ
最後に実際に制度を利用する際に、どのようなステップを踏むのか確認します。
すでに自筆証書遺言がある場合は、保管の申請に必要な書類や確認書類を準備しましょう。
①自筆の遺言書を用意する
②最寄りの法務局や遺言書保管所の場所を調べる
③保管の申請書を作成する
④該当する法務局に予約を入れる
⑤保管の手続きを行う
⑥保管証を受け取り大切に保管する
まだ遺言書も書けていない…という場合は、法務局が提供している準備や制度の詳細がわかるガイドブックがあります。
ぜひガイドブックも参照してみましょう。
制度の利用・保管の申請には予約が必須なので注意
遺言書を預ける本制度の手続きは、「事前予約」が必須とされています。
予約を取る方法は2種類あります。
①「法務局手続案内予約サービスの専用HP」から予約
②予約を取りたい遺言書保管所への電話又は窓口での予約
※電話や窓口から予約する場合は、それぞれの運営時間にご注意ください
予約をして時間を確保するほうが、準備面からも安心です。落ち着いて説明を受け受けるためにも予約を活用しましょう。
最寄りの法務局(遺言書保管所)を調べて問い合わせましょう
遺言書の保管は法務局、もしく遺言保管所がある支店や出張所でも預かってもらえます。
全ての法務局で預かりが可能なのではなく「遺言保管所」のある場所でしか、制度を利用して預かってもらうことはできないため、下記の一覧などから、ぜひ対象の最寄り法務局を調べてみてください。
特に所在地は以下の3点を注意して選びましょう。
①遺言者の住所地
②遺言者の本籍地
③遺言者の所有する不動産の所在地
保管した場所でなければ、遺言書の閲覧や申請の取り消しなどができないため、足を運びやすい場所がおすすめです。
相続人の方による書類の手続き・請求についても同様です。
▼最寄りの法務局を確認する
まとめ:自筆の遺言書の備えは少しずつ始めやすくなっている
この制度のように、遺言書を通してご自身の最期を考える・備えることへのハードルは、少しずつ下げられる工夫が行われています。
エンディングノートの次に取り組みやすいのは自筆の遺言書ですので、ぜひ本制度を知っていただいて遺言書のご準備を考えてみてはいかがでしょうか。
エイト司法書士事務所では、自筆の遺言書のご相談も歓迎しております。近年は若い世代の方からのご相談も増えており、柔軟なアドバイスやご提案をさせていただいております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。