【司法書士が解説】遺言書の書き方と生前対策を知ろう
エンディングノートは気軽に書けそうに感じるけれど、遺言書は自分には大げさかもしれない。
遺言書や将来の備えをしようと思っていても、そう考えている方も多いかもしれませんね。
でも最近は、若い世代や将来のために遺言書を準備しようと考えている方が実は増えているんです。
前回ご紹介した、エンディングノートは遺言書を書く前のステップとしてもオススメです。
この記事では生前対策や遺言書について、大阪で生前対策に特化して活動されている司法書士「中川哲男(なかがわてつお)」さんに、遺言書の備え方、書き方と疑問点まで、わかりやすく解説していただきました!
ぜひ前回の「エンディングノート」の解説記事も合わせてご覧ください!
【前編】まず知ろう!エンディングノートの書き方
【後編】相続の基本を知ろう!遺言書の書き方
前回に引き続き、今回は「遺言書」を始めとした「相続」について教えていただこうと思います。
よろしくお願いいたします!
よろしくお願いします。エンディングノートから遺言書と聞いて、とてもハードルが高いと感じる方はまだまだ多いと思います。
でも若い方だからこそ、将来のために関心を持って準備をされている方も実は増えているんです。ぜひより多くの方興味を持っていただけると嬉しいなと思います。
目次
相続は手続きの連続!葬儀から役所関係まで事前に決めたいこと
私は長女なので、両親のどちらかは私がいろいろすることになると思うのですが、相続とはどのタイミングで手続きなどが始まるのでしょうか?
細かく話すと難しい部分も多いですが、相続の手続きですぐ「お金の話」になることはほぼありません。
まずはご両親や親族の方が亡くなられたところから、役所を始めとした葬儀などの手続きから始まります。
自分が相続人となる立場として、まず両親や身内の方が亡くなった場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
まずは役所に「死亡届」を提出する、そしてご遺体についての手続きをすぐ行うことになります。
ですが、ここは葬儀社さんがサポートしてくださることが多いので、お付き合いのある場所があれば、お任せするのも一つの方法です。
病院などは基本的にご遺体を預かってはくれないとお聞きしたこともあります。やらなければとわかっていても、パニックになってしまいそう……。
状況が状況なので、ショックで頭が真っ白になる方も多いです。
全部自分でやらなければと思わずに、事前に頼れる方と繋がっておくと安心できるかと思います。
相続の手続きが必要なものはたくさんある
葬儀などが終わったら、いよいよ手続きというイメージがあります。
やることはたくさんあると思いますが、どのようなことをやっていくのでしょうか?
その通りです。ご葬儀が終われば、次は役所関係の手続きがメインになります。
例えば、年金受給があれば止める、支払いを停止するなどいろいろありますね。ここは役所さんも慣れていらっしゃるので、親切に案内してくれると思いますよ。まずは事務手続きや、眼の前にあることから片付けていく形になりますね。
いよいよ具体的に手続きや残ったものをどうするか決めていくのですね。
事前に伺っていた口座のことや家のことなども、情報が残っていないと大変なのがよくわかりますね…。
よくある流れとしては四十九日が終わってから、ご相続の手続きに移られる方が多いです。
ですが注意点として、亡くなられた方に借金などのマイナスがある場合は、相続放棄などの手続きが必要になることもあります。これは期限があるものですから、早めに専門家に相談してもらうのがベストです。
それは相続されてしまうと困ることですね。
エンディングノートに限らず、言いにくくても知らせておかないといけませんね…。
他にご相談をいただくケースとしては、葬儀代が問題になることがありますね。できれば元気なうちに、葬儀費用について考える機会を設けてもよいかもしれません。
- 相続の手続きですぐお金の話になることは少ない、まず葬儀などの対応
- 葬儀社や役所など手続きに慣れた人とのコネクションを持っておくと安心
- 四十九日以内に行っておきたい手続きも。事前にわかるなら早めに司法書士に相談を
知っておきたい「法定相続情報証明制度」とは?
しっかりした説明ページがありますね…。これはどういった制度なのでしょうか?
とても便利な制度ではありますが、詳しく解説すると長くなる部分ですので、今回は簡単に解説しますね。
相続の手続きの際には、さまざまな書類や個人情報が必要になります。
例えば、銀行預金の解約には戸籍情報などが必要になりますが、こういった書類を集めたあとの手続きが便利になる制度です。
解説の図を見ると、制度を利用すれば同時に手続きが進められて便利という感じがしますね。
ただ注意点があるとすれば、実は最初に書類を集めるまでが大変なんです。
僕たち司法書士は、この集める段階から相談に乗れます。
例えば戸籍情報も、自分が生まれた本籍地を知らない方も意外といるんですよ。
言われてみると取り寄せたこともないので、明確にどこと言いきれないかもしれません。
ただこの制度は比較的、最近できたものです。ですので将来的に、細かい部分は変わるかもしれませんね。今回はこうした制度があると知ってもらえるだけで十分かと思います。
- 法定相続情報証明制度は、相続に関する手続きを助ける便利な制度
- 制度を利用するには、事前に戸籍などの個人情報を集める必要がある
- 個人の情報を集めるのは大変、司法書士は書類を集める段階から協力できる
遺言書を書いてみよう:自筆証書遺言と公正証書遺言
中川さんは生前対策に特化されているので、お伝えしたいことも多いかと思います。
とはいえ、遺言書というとどこか遠いイメージもあります。
司法書士さんから見る、「遺言書を残すメリット」はなんでしょうか?
やはり「相続争い、紛争を防止・予防につながる有効な手段になる」という部分が非常に大きいと思います。
莫大な遺産を巡って相続争いが…といったドラマなどのイメージが強くて、ピンとこない方も多いかもしれません。
ですが大きな財産がなくても、意外と相続のトラブルというのはよく起きているんです。
え、そんなに起きるものなのですか?
もちろんありますよ。家はこの人に相続したい、寄付をしてほしいなど要望もさまざまです。
実は、意外と何もない場合の方が、裁判所まで行ってしまう事例はかなりあるんです。裁判まで行くと本当に大変ですからね。そのためにも、遺言書で防げるトラブルはなるべく防ぎたい想いがあります。
あれこれ手続きに追われるだけでも大変なのに、そこで人同士のトラブルまであると、心身ともに疲弊してしまいそうです。避けられるなら避けたいところですね。
他にもエンディングノートと同様に「残された人にメッセージを残せる」「財産がどれくらいあるか・どうしてほしいかを残せる」「意思表示が出来る」などがあります。
法的な効力を持つという点も、エンディングノートにはないメリットと言えますね。
遺言書の希望通りに全て対応出来るわけではありませんが、自分の財産の「最終的な行路を生きている間に決められる」のはご自身だけです。
ぜひまだ早いと思わずに、興味を持っていただければと思います。
そこで始めやすいのが「エンディングノート」なんですね。
遺言書を考える最初のステップとしても、両方のメリットを知っておくのが大切に感じます。
遺言書は必要?用意しておいたほうが良い人は?
具体的に「遺言書」についても伺いたいと思います。
遺言書を残したほうが良い、なおかつ司法書士さんに任せたほうがよいのはどんな人でしょうか?
本音を言うと、どんな人でも遺言書は残したほうが良いと思います。
書き方については後ほど解説しますが、やはり遺言書があると多くのトラブルを事前に防げるメリットが大きいので、ことが起きる前に相談をしてほしいなと思っています。
最近のご相談ですと、独り身の方やお子様がいらっしゃらないご夫婦がお互いに書きあっていることが多いです。
独り身の方だけではなく、ご夫婦でお互いに書いて残しておくことが多いのですね。
これは何故増えているのでしょうか?
どちらかが亡くなった場合に、配偶者+相手のご家族・親・ご兄弟など、相続に関係する人数が多くなることが理由の一つです。
関係する人が多いほど、やはりトラブルは起きやすくなってしまいます。
たしかに、登場人物が増えて大変です。配偶者のご家族との関係性によっても、残った財産をどうするか事前に意思表示しておかないと、大変なことになる可能性も想像できますね。
他には、ご兄弟がおられない一人っ子の方や、ご家族との仲が親密でない場合のご相談も多いですね。
つまり相続人となる方がいないとき、残された財産は国にお返しすることがほとんどです。
そのため生前のうちに寄付を希望したり、なんらかの要望を残したいという方も時代の流れもあって増えてきた印象があります。
- 相続の手続きですぐお金の話になることは少ない、まず葬儀などの対応
- 葬儀社や役所など手続きに慣れた人とのコネクションを持っておくと安心
- 最近はお子様のいないご夫婦や一人っ子の方など、若い世代の意識が高い傾向がある
遺言書を書いてみたい:自筆で残すメリット、専門家に任せるメリット
ドラマなどの影響が大きいイメージだと思うのですが、遺言書は直筆で書くものなのでしょうか?
筆などを使って、こう厳格な感じで…。
フルカワさんがイメージされているのは「自筆証書遺言」と呼ばれるものですね。その名の通りご自身で書くことができます。もう一つは「公正証書遺言」です。
遺言書には3つの形式がありますが、この2つがポピュラーな形式ですので、今回はこれらを解説しますね。
自筆証書遺言:自分で書けてすぐ取り組める遺言書
「自筆証書遺言」は多くの人がイメージする、自筆で書ける遺言書の形式です。若い方やまだまだ状況が変わるけれど備えたい方には、こちらをオススメしています。
◯自筆証書遺言のメリット
- 紙とペンがあればすぐ取り組める、書きやすい遺言書の形式
- 内容の変更が行いやすく、自宅保管が可能で若い方にもオススメ
- 法務局に預かってもらえる制度が始まり、信頼性が担保されやすくなった
一方で手軽さゆえのデメリットもあります。
ご本人が書いたという証明が難しい、また自宅で保管されている場合、誰かに破棄・改ざんされてしまう恐れもあります。他には相続人に見つけてもらえなかったなどですね。
◯自筆証書遺言のデメリット
- 本人のものだと証明するのが難しい
- 要件を満たしているか、家庭裁判所の検認が必要
- 自宅保管中に紛失、誰かに破棄・改ざんされる恐れがある
手軽さや取り組みやすさは魅力ですが、やはりデメリットも知っておかないといけませんね。せっかくトラブル防止のために遺言書を用意しても見つけて貰えなかったら悲しすぎます。
ただ近年、法務局で自筆の遺言書を預けられる制度が始まりました。
この制度を利用すれば、自宅保管での紛失や改ざんを防ぐことができます。詳しくは、法務局にお問い合わせいただくか、司法書士にご相談いただければ内容を含めて適切にアドバイスできますよ。
これは便利ですね!自宅で保管するより安心ですし、うっかり何かあったときにも頼りになりますね。
実際に自筆で遺言書を書く場合には、司法書士さんにはどんなことを相談できますか?
司法書士としては、内容や書き方などをアドバイスやチェックができます。
年に1回くらいのペースで見直す・調整するような流れでやっています。エンディングノートと同様に、自筆の遺言書は若い方でも書きやすいので、僕たちもオススメしています。
公正証書遺言:公証人を伴う厳格な遺言書
ではもう一つの「公正証書遺言」には、どんなメリットや違いがあるのでしょうか?
「公正証書遺言」は、公証役場の公証人が作成してくれます。
公証役場で作成するので、本人のものであることが担保されます。記録が残るので、紛失や改ざんの恐れがなく安心な方法です。
◯公正証書遺言のメリット
- 公証役場で公証人と作成するため、信頼性が高い
- 本人のものである証明が、証人が同席して担保される
- 記録が残るので情報の紛失や改ざんリスクが低く安心
一方でデメリットとしては、書き直しや内容を変えるのに手続きが必要で大変なことや、作成に手数料がかかります。ですが確実に要件を満たした、法的な効力がある遺言書が作れますので、真剣に残したい方はこちらを推奨します。
◯公正証書遺言のデメリット
- 役場での手続きなど、作成に手数料がかかる
- 書き直しや内容の変更に手間がかかり大変になる
デメリットといえど、信頼性などのことを考えると一度しっかり作ってしまえば、内容を変更しない人もいるかもしれませんね。ご家族や相続人が多い方は、ちゃんと残しておくほうがよさそうです。
どちらの方法でも、要件を満たして作っていただければ法的な力を持ちます。
あまり身近なものではないので、敬遠しがちですが取り組みやすい方法もありますから、ぜひご自身の将来のためにも知っておいてほしいなと思います。
- 若い方や年に1回ペースで内容を見直したい方は、自筆証書遺言がオススメ
- 自筆証書遺言は紙とペンがあれば始められて手軽。法務局に預かってもらえる制度も
- 公正証書遺言は公証人を伴って公証役場で作成するため信頼性が高くトラブルが起きにくい
法定後見制度とは?
無料で利用できるとありますが「成年後見制度」とはなんですか?
一般常識としても、ちゃんと知っておきたいことかもしれません。
少し遺言書とは離れますが、簡単に解説しますね。
ご高齢の方が身内におられる場合に、知っていると助かるかもしれません。
これも基本的に「ご本人の財産を守る」という考えから生まれている制度です。
誰しも老いや認知症、病気などによって、意思能力が弱まる可能性があります。いわゆる判断能力ですね。
そうしたときに、判断を助ける「後見人」を定めて、さまざまな契約や手続き・財産を守ることを支援する制度です。
これは頼もしい制度ですね。年齢に関係なく認知症のリスクはありますし、もし両親がそうなってしまったら、ちゃんと手助けできるようにしたいです。
年配のご家族が急に「家や土地を売ります」といい出したら、やっぱり怖いじゃないですか。
家庭裁判所を通して、後見人・財産の管理人を選ぶことができます。細かい説明は今回は省きますが、ご自身で身内やご家族を選ぶこともできますし、専門家が選ばれることもあります。
ご自身の判断力が弱まってくると、何をするのも難しくなってきます。ごうした制度を使えば、ご本人の意志を尊重しつつ、代わりに良い選択をする手助けができます。今すぐ必要という方は少ないかもしれませんが、ぜひ覚えておいてほしいなと思います。
こちらもこういう制度があると知っておくことが大切なんですね。
- 「成年後見制度」は判断力が弱くなった方の契約や手続きを支援できる制度
- 本人の意志を尊重しつつ、後見人が代理で手続きなどができるようになり便利
- 家庭裁判所を通じて、後見人を決められる。自分で選ぶこともできるが審査あり
エンディングノートの次に取り組むと良いことは?
エンディングノートの次に、もう少し本格的に取り組みたい方にオススメな生前対策はありますか?
「自筆の遺言書」から取り組んでいただくのがオススメかと思います。
特に若い方は、生活状況・環境が数年もしないうちに変わることも多いと思います。管理や書き直しが行いやすい点でも、自筆証書遺言が次のステップとして取り組みやすいですね。
他には、生前対策というよりも日常的にできることとして、
・使ってない銀行口座、仮想・証券会社の口座などを整理する
・物を減らす・整理をして断捨離をしてみる
こうしたことを、やってみるのが良いかと思います。
なにごとも、始めやすいことが一番ですね。
たしかに、これなら週末や気がついたときでも取り組めそうです。
難しいことではなく、日々の中で見直していくとよいのですね。
エンディングノートを家族にも書いてもらいたい
お話を聞いてみて、自分も残してみようという気持ちが高まったと同時に、両親にも書いてほしいと強く感じました。両親に勧める良い方法などはありますか?
こうしたご相談自体はとても多いですね。特にまだご両親がお元気な場合、話題を出すのも難しいということもあると思います。
ただ以前よりも、エンディングノートや終活などの活動がオープンになってきた時代の変化は感じます。ですので、やはり世間話などから興味を持ってもらうことが大切かもしれません。
たしかに「終活」という言葉が身近になってきたように、自分の終わりを考える・備えることに、少し前向きな印象がありますね。
エンディングノートもやさしい遺言書みたいなものですし。
無料セミナーなども開催されていますので、一緒に行ってみるのも効果的かもしれませんね。大切なのはきっかけ作り、やりやすいところから始めるのが良いと思います。
ほかには、家族で集まって話す機会を増やすだけでも、よい効果があると思います。定期的に会話できる機会を作っておくと、大切な話を切り出しやすくなるかもしれません。
毎日が忙しいと、家族で集まるのは年末年始だけなんてことも珍しくないですもんね。対面が難しくても電話や、オンライン通話など会話をする機会を定期的に持つだけでも効果がありそうなのは納得です!
少し余談ですが、兄弟や子どもが複数いる場合、それぞれがご両親と別々に話すと解釈違いが生まれることもありますね。家族の仲が良くても、解釈違いのせいで誤解を招く可能性も少なくありません……。
大事な話をするときは、みんなが揃って話せる機会があるといいですね。
- 大切なのはきっかけ作り。ご自身の終わりや将来を前向きに考えることが重要
- いきなり切り出す前に、家族やご両親と会話する機会を増やすだけでも効果あり
- 無料セミナーなどに一緒に参加してみたり、取り組みやすいところから一緒にやってみる
遺言書や生前対策で困ったら、司法書士さんに相談しよう!
本日はそれぞれのポイントを解説して頂き、ありがとうございました。
とても書きやすくなり、エンディングノートは今から書いてもとても役立つものだと身近に感じられました。
最後に、中川さんからお伝えしたいことがあればお願いします。
「エイト司法書士事務所」では、こうした生前対策を始めとした、無料相談を行っています。
初回相談は無料(約1時間)です。
「自分の家はどうなんだろう?」と心配事や気になることがあれば、まずお話を聞かせてください。
中川さんは大阪のなんば・心斎橋エリアに事務所を構えていらっしゃるんですよね。
普段の生活では司法書士さんとお話できる機会はほとんどないので、こうして相談の場を設けてもらえるのは嬉しいです!
一つとして同じ家庭はありませんから、無料相談とはいえしっかりお話を聞いて、どんな対策をすればいいか相談に乗りますよ。
一人で悩むよりも、専門家と話すことで悩みを解決できるかもしれません。
もちろん、その後に強引な勧誘などは行いませんのでご安心ください。
ご相談をして専門家に任せた方がいいと気がつける案件も多そうですね。
悩みと一緒に価格や契約面も相談すると、安心できそうです。
今回はエンディングノートについてご回答ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました。
この記事を通して、エンディングノートや遺言書など生前対策に興味や、考えるきっかけになってくれることを願います。
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【前編】まず知ろう!エンディングノートの書き方
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